乳幼児の食物アレルギーについて
食物の摂取によって異常な反応が起こる食物アレルギーは、乳幼児でしばしば問題になっています。ただ、安易な診断は不必要な食物制限につながりやすいので気を付けなければいけません
食物アレルギーとは原因となる食物を食べた後に、 アレルギー的な反応により身体に異常な症状が出る状態を言います。 これには摂取後2時間以内に起こる即時型反応と、数時間以降に起こる非即時型反応があります。
即時型反応としては蕁麻疹、発赤、掻痒などの皮膚症状、喘鳴などの呼吸器症状、粘膜腫脹、嘔吐などが見られます。特に重症な症状としては、血圧が下がる全身性のアナフィラキシーショックという危険なものもあります。 これらの症状は、アレルギーに関係するIgEという免疫グロブリンを介した反応によって引き起こされています。
食物の中の食物アレルゲン(抗原)、その多くは分子量の大きな糖蛋白ですが、この食物抗原と生体の作るIgE抗体が結合することで、ヒスタミンを初めとする様々な物質が放出され、即時型の反応が引き起こされるのです。
非即時型反応としてはアトピー性皮膚炎との関与が指摘されており、乳幼児のアトピー性皮膚炎の30%程度は食物アレルギーが関係していると考えられています。
乳児期の食物アレルギーの有病率は5〜10%、学童期では1〜2%と言われています。原因食物としては、卵、ミルク、小麦が主要な3つの抗原で、その他ソバ、魚介類、果物、エビ、肉類、大豆などがあります。乳児期には上記の3抗原が目立っていますが、1才を過ぎると次第に免疫的寛容からこれらの抗原に対する反応は低下し、4〜5才頃にはかなりの人はアレルギーを起こさなくなります。6才以降になれば、卵、ミルク、小麦に替わり、ソバ、エビ、魚介類などが主要な抗原になっていきます。
食物アレルギーの診断は、食物摂取時の反応の既往がまず第一となります。 さらににその裏付けとして抗原特異的IgE抗体の検査がよく使われています。ただ、この抗原特異的IgE抗体は個体がその抗原に感作されていることを示すだけで、本当に症状の原因になっていることを示している訳ではありません。
食物アレルギーとは、食物を食べたら症状が出て、止めたら症状がなくなるというのが基本です。最終的には食物負荷試験、食物除去試験で関与を判定することになります。食物負荷は、アナフィラキシーを起こすような重症の人は厳密な負荷試験が必要ですが、殆どの人は今までの摂取時のエピソードや極少量の摂取で判断することが出来ます。 食物除去に関しては疑わしい食物を10日から2週間完全に制限することで、その効果を見ることが出来ます。
食物アレルギーの治療は、明らかに症状の原因になっているのであれば、食物制限をすることになります。しかし、免疫寛容が発達することで年令と共に制限は次第に解除出来るようになります。
また、生は駄目でも加熱などにより食物の低アレルゲン化を図れば摂取出来る場合も少なくありません。抗アレルギー剤のような薬物治療の併用で症状の発現を抑えることも可能です。アレルゲンとなる多くの食物は、身体にとっても大切なものが多く、除去食の煩わしさ、身体発達、心理面への影響を考えても、解除出来る場合は早く無意味な制限を止める方がよいと思います。
食物負荷で症状がないのに、抗原特異的IgE抗体の値のみで制限を始めたり、継続したりすることには賛成出来ません。症状が出なければ、食物負荷でより免疫寛容が促進しやすくなるとも言われています。1才を過ぎれば半年から1年の単位で解除可能かをチェックしていくのがよいと思います。
最後に、食物アレルギーの中で稀に重度のアナフィラキシーショックを起こす人がいます。このような人は生命にも関わるので、完全な食物制限が必要です。安易な食物負荷は危険ですし、ショック時の対応を常に考えておかなければいけません。
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