川崎病はどのような病気か知っていますか
乳幼児に多い川崎病は、冠動脈瘤発症の危険性とその閉塞により突然死が起こる病気として知られています。原因はまだ正確には判っていませんが、川崎病の疑いがあれば、早期の診断、治療がとても大切になります。
川崎病は、1967年川崎富作博士が「小児急性熱性皮膚粘膜リンパ節症候群(MCLS)」として症例報告したのが始まりです。 それ以前から同様の症状は見られていたようですが、いくつかの症状がみられる一つの病気として初めて認められるようになったのです。 その後、この病気が心臓の冠動脈瘤を起こし突然死の原因となる重要な病気であることが明らかになり、世界的に認められるようになりました。 当初は診断名はMCLSとされていたのですが、次第に発見者の名をとった川崎病と呼ばれるようになったのです。
■ 川崎病はどの位発病しているのですか 川崎病の発症は乳幼児に多く、4才以下が80〜85%を占めています。発症数は年によって変化はありますが、最近では毎年全国で6000〜8000人が発病しています。男女比は1.3〜1.5:1で男児に多く、再発例は2〜3%、同胞例は1〜2%にみられます。心臓後遺症などでの致命率は0.1%と報告されています。
■ 川崎病の症状はどのようなものですか 川崎病の診断には6つの主要症状とその他の参考条項があります。主要症状は次の6つの症状です。 1. 5日以上続く発熱(但し、治療した場合は5日未満でもよい) 2. 両側眼球結膜充血 3. 口唇紅潮、いちご舌、口腔咽頭粘膜のびまん性発赤 4. 不定形発疹 5. 四肢末端の変化 (急性期)手足の硬性浮腫、掌蹠ないし指趾先端の紅斑 (回復期)指先からの膜様落屑 6. 急性期における非化膿性頚部リンパ節腫脹
この6症状のうち5つ以上認められるか、4つの症状しかなくても経過中に断層心エコー検査などで冠動脈瘤(拡大)が確認されれば川崎病と診断できます。ただ、これらの症状は常に同時に起こる訳ではありません。当初は2つ3つしかなかった症状が次第に増えていくことが多いので、常に注意していることが大切です。頚部リンパ節腫脹は6-7割程度の発現ですが、その他の症状は9割以上は発現します。また、参考条項の中で一番診断に役立つものがBCG接種部の発赤です。この症状はかなり川崎病に特異的な症状と言われているからです。
■ 川崎病の心血管病変はいつ起こるのですか 川崎病の急性期である1-10病日では、心筋炎、心外膜炎がまず起こりやすく、後半になって冠動脈の拡大性病変、瘤形成が出てくるようになります。11-20病日に冠動脈瘤の出現、増大が更に目立ってくるといわれています。その後、20日を過ぎると冠動脈拡大のみの場合は多くは正常に戻っていきますが、動脈瘤が出来た場合は多くはその症状が残ってしまうのです。冠動脈病変の合併率は、一過性の冠動脈病変では8%程度、持続性病変は4%程度あると報告されています。
■ 川崎病の治療はどうするのですか 川崎病の治療の基本は、急性期の強い炎症反応を可能な限り早期に終息させ、結果として合併症である冠動脈瘤の発症頻度を最小限にすることです。この炎症反応を抑えるため、1983年にガンマグロブリン大量+アスピリン療法が導入され、以後治療効果が格段によくなりました。ガンマグロブリン投与に関しては当初は5日間連続投与法でしたが、1991年に1回超大量投与法が提唱され、現在ではこの方法が主流になっています。早期に炎症を抑えるためには、これらの治療を第7病日以前に行い、第9病日以前に治療効果が出ることが大切とされています。それ故、川崎病の診断が遅れることは治療の遅れに繋がるため、早期の診断が必要になるのです。しかし、ガンマグロブリン療法は有効な治療法ではありますが、それでも20%程度には不応例が存在します。その場合には、ガンマグロブリン再投与、ステロイド療法、ウリナスタチン療法、血漿交換療法などの追加治療が必要となります。
■ 川崎病の原因は分からないのですか 川崎病の原因は長い間の研究調査にも関わらず、今でも正確に解明はされていません。今まで、細菌、ウイルス、リケッチアなど多くの病原体が提唱されましたが、原因病原体と認められたものはありません。逆に、感染などを契機とした過剰な免疫系の異常が疑われるようになって、免疫担当細胞の活性化、高サイトカイン血症、細菌の内外毒素によるスーパー抗原の関与などが提唱されています。しかし、これらの説も全ての症状を解明することは出来ず、一つの因子だけで川崎病を解明するのは難しいとも言われています。
川崎病は日本に多発している病気で、確実にある頻度では発症しています。確かに、冠動脈瘤を合併する危険性はありますが、早期に発見、診断し、早期に治療をすれば、多くは後遺症なく改善します。小児特に乳幼児の発熱に際しては、川崎病の症状がないかどうか常に気を配り、疑わしければ医療機関を必ず受診して下さい。
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