1月になってから増加していたインフルエンザの患者数は、1月下旬から2月にかけて更に増える傾向にあります。このまま流行が進めば、最近では最も患者の多かった2004年〜2005年のシーズンと同程度の発症数になるものと思われます。
昨年12月頃より始まったインフルエンザの流行は、1月から徐々に患者数は増加し始め、1月下旬から2月にかけて急速に悪化しました。神戸市においては1月末には、1医療機関あたり週に40人以上の発症を認めています。このまま流行が進むと、最近では最も患者の多かった2004年〜2005年のシーズンと同程度の流行になるものと思われます。恐らく流行の経過としては2月初めがピークで、2月中旬からは流行が収まっていくものと考えられます。しかし、すぐに発症がなくなる訳ではありませんから、3月までは流行は続くものとして注意していかなければいけません。
現在、神戸市で流行しているインフルエンザの種類は、A香港型(H3N2)、Aソ連型(H1N1)、B型の3種です。その発現比率は当初は2:1:1程度で、A香港型が多かったのですが、次第にB型の増加が目立ってきています。昨年流行したAソ連型(H1N1)は今年はあまり見られないと思われていたのですが、全国的にはA香港型と同程度に出現し、2年連続の流行になっています。
更に驚くべきことは、抗ウイルス薬としてのタミフルの耐性化が急速に進んでいることです。タミフルのAソ連型(H1N1)インフルエンザウイルスに対する耐性化は、昨年までは日本では平均して2-3%と言われていました。ところが今シーズンに関しては、日本で採取されたAソ連型(H1N1)ウイルスの97%がタミフル耐性になっていると報告されています。臨床的にはAソ連型インフルエンザにもタミフルは効果があるようで、実験室での耐性化が必ずしも実際の治療に反映していないようですが、今後この耐性化が治療の大きな障害になる可能性はあります。勿論、タミフルはA香港型(H3N2)、B型には耐性を示していませんので、治療薬としての有効性に変わりはありません。また、リレンザはAソ連型(H1N1)を含め全ての型に耐性はありませんので、タミフル耐性のAソ連型に対しても十分な効果が期待出来ると思います。
タミフルの耐性化はインフルエンザウイルス増殖に関連する酵素ノイラミダーゼの質的変化に起因していると考えられています。今後感染性を保持したまま、このような変異が更に起こるようになれば、タミフルばかりでなくリレンザに対しても耐性化が起こる可能性はあります。ウイルスの耐性化の情報にはより注意していく必要があるようです。