気管支喘息の長期管理について その2
気管支喘息の長期管理の目標は、日常生活が支障なく過ごせるように管理することが大切です。
気管支喘息の長期管理は、簡単に言えば 日常生活が普通どおりに過ごせるようにすることです。 夜はきちんと眠れ、登園・登校が出来て、運動しても 咳や喘鳴などが出ず、かぜになっても喘鳴が出ないように コントロールすることなのです。
気管支喘息の病因は慢性の気道炎症ですから、 発作が一旦治っても気道炎症がすぐに 改善する訳ではありません。 気道炎症が残っていれば、またすぐに発作が 起こりやすくなります。それ故、気管支喘息の 長期管理薬にはこの気道炎症を抑える抗炎症作用を 持っているものが必要となります。
抗炎症作用の最も優れているものが吸入ステロイド薬ですが、 次に効果のあるものに抗アレルギー剤の中のロイコトリエン 受容体拮抗薬があります。
現在、小児に最もよく使用されているのが このロイコトリエン受容体拮抗薬です。
■ ロイコトリエンとはどんなものですか ロイコトリエンは気管支喘息の発症に関与する化学伝達物質の一つで、気管支収縮、粘膜血管透過性亢進、気道分泌亢進に強い作用を有し、気道に炎症を起こす好酸球の活性化、気道の慢性炎症による組織変化(リモデリングと言います)などに強い影響を与えています。
化学伝達物質の中では最も作用が強いため、それを抑制することが喘息の長期管理にはとても大切になります。
■ ロイコトリエン受容体拮抗薬にはどんなものがありますか 現在、小児で適応が認められているものは、プランルカストとモンテルカストの2種類です。 製品名では、オノン、キプレス、シングレアといった薬で、ドライシロップや口内で溶けるチュアブルなので飲みやすく副作用も少ないためかなり多用されています。
直接の気管支拡張作用はありませんが、気管支収縮抑制、抗炎症作用のため気管支拡張、呼吸機能改善が認められ、運動誘発喘息発症にも抑制効果があります。
また、吸入ステロイド薬との併用効果も高く、吸入ステロイド薬の減量にも役立ちます。小児気管支喘息ガイドライン2005では、長期管理に関しロイコトリエン受容体拮抗薬をかなり重視しています。中等症以上では吸入ステロイド薬との併用が勧められ、軽症以下でも単剤としての使用が認められています。
■ その他の長期管理薬にはどんなものがありますか 吸入ステロイド剤、ロイコトリエン受容体拮抗薬以外では、その他の抗アレルギー剤、テオフィリン徐放製剤、長時間作用性β2刺激薬があります。
1. ロイコトリエン受容体拮抗薬以外の抗アレルギー剤では、一つにインタールに代表される化学伝達物質遊離抑制薬があります。 これはアレルギーに関連したマスト細胞からの化学伝達物質の放出を抑制するもので、それによって気道炎症を抑える効果もあります。
特に吸入薬であるインタールは長期にわたり使用され、 その安全性、効果は認められています。
次に、ヒスタミンH1拮抗薬があり、ヒスタミン及びその他の化学伝達物質の受容体での結合を阻止するもので、鼻汁分泌抑制もあるのでアレルギー性鼻炎との合併例などには、よく使われています。
もう一つ特殊なものでTh2サイトカイン阻害薬があります。 これはある種のリンパ球からの細胞刺激物質産生を抑制し、それにより好酸球作用抑制、IgE抗体産生抑制を起こすものです。アレルギー体質の強いIgE高値の小児には適応があります。
2. テオフィリン徐放製剤は以前はよく使用されていた薬剤で、気管支拡張作用と共に軽度の抗炎症作用が認められています。 ただ、乳幼児でのテオフィリン関連ケイレンとの関与が疑われ、気管支喘息ガイドライン2005から6ケ月未満の乳児では使用禁、5才以下の乳幼児では使用に厳重な管理が必要とされるようになりました。(詳細は、2005年12月クリニック通信を参照して下さい) 安価で効果もよく有効な治療だったのですが、上記の理由で最近では使用がかなり限定されています。
3. 長時間作用性β2刺激薬は、本来短期で使われる気管支拡張剤であるβ2刺激薬の中で、作用時間の長く持続するタイプのものです。 β2刺激薬そのものは気管支拡張作用のみで、気道炎症抑制作用は持っていません。 それ故、この薬剤単独で長期管理することは出来ず、吸入ステロイド剤との併用が原則となっています。
特に、吸入ステロイド剤のみでは十分なコントロールが出来ない場合、この薬剤との併用で改善が期待出来ます。ただ、あくまでドライパウダー吸入での治療なので、5才以上の年令が適応となります。
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