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受動喫煙―その害を考えましょう

 成人におけるタバコの有害性は広く知られています。しかし、喫煙者の周りにいる小児、乳幼児の害はあまり知られていません。タバコの有害性は喫煙者本人だけでなく、受動喫煙という形で周りにいる小児、乳幼児にも害を及ぼしているのです。

 タバコの煙にはニコチン、タール、一酸化炭素、各種発癌物質など4000以上の化学物質が含まれています。
その全身への影響は、肺癌・喉頭癌などの各種の癌、心筋梗塞・狭心症などの虚血性心疾患、脳血管障害、肺呼吸障害など多くの疾患の発症悪化因子と認められています。
 そして、この影響が喫煙者本人だけでなく、受動喫煙という形でタバコを吸わない周りにいる人にも悪影響を及ぼしていることが問題になっているのです。




■ タバコの煙にはどんな区別があるのですか
 タバコの煙は、喫煙者本人が吸い込む煙(主流煙)、点火したタバコから立ち昇る煙(副流煙)、喫煙者が吐き出す煙(呼出煙)に分けられます。この内、受動喫煙に関わるものは、副流煙(85%)と呼出煙(15%)になります。主流煙と副流煙の違いはその温度差で、副流煙は低温の上、酸素供給量が少ないため不完全燃焼になりやすく、しかもフィルターを通らないため、有害物質は主流煙より数倍も高くなります。また、主流煙は酸性ですが、副流煙はアルカリ性となり目やのどを強く刺激しやすいのです。


■ 受動喫煙はどの程度起こっているのですか
 喫煙者の近くにいる非喫煙者の受動喫煙の程度は、環境によって変わるので一律には決まりません。換気のない同室にいた場合は、受動喫煙者は喫煙者の数分の一は吸入していると言われています。また、タバコの煙は家中に広がりますから、別室で吸ったとしても非喫煙の場合に較べて10倍、仮にドアを閉めて屋外で吸う状態でも2倍の暴露の危険性が出てしまいます。この受動喫煙の状態は、基本的には禁煙をしない限りなくすことは出来ません。煙は見えなくても、有害物質の蓄積は確実に起こっているからです。


■ 受動喫煙の害にはどのようなものがありますか
 成人に対するタバコの害が明らかなように、当然小児においてもその影響は出てきます。気管・気管支粘膜が傷害され気道炎症が起こるために、気管支喘息、気管支炎、肺炎などの呼吸器疾患になりやすくなります。扁桃炎、中耳炎、副鼻腔炎などのリスクも高めます。また、成長や知的発達への影響も指摘されています。更に、将来的に発癌、高血圧、虚血性心疾患、脳血管障害などの発症リスクを高める危険性も言われています。
 乳児に関してよく知られているのは、SIDS(乳幼児突然死症候群)発症のリスクを高めるということです。SIDSは生後2ヶ月〜6ヶ月の乳児に多くみられる睡眠中に突然死する危険な病気で、日本では出生4000人に1人発症すると言われています。この病気の発症を高めるリスクとして、うつぶせ寝、喫煙環境、人工乳が挙げられているのです。


■ 妊娠中の喫煙、受動喫煙の胎児への影響はどんなものですか
 妊娠中の喫煙は、ニコチンなどの作用で臍帯や胎児血管が収縮し血流低下を起こすことで、酸素不足や栄養不足の原因となります。同様に一酸化炭素の胎児への移行により、より低酸素状態を起こすことにもなります。その他の物質でも代謝障害を起こし、子宮内発育不良や流産・早産の危険を高め、先天異常や呼吸器障害、脳室内出血の発症も高くなると報告されています。これは妊婦自身の喫煙だけでなく、受動喫煙でもその影響が指摘されており、家庭内の喫煙が問題となります。また、妊娠中ばかりでなく出生後も発育遅延、知的発達障害などのリスクが、喫煙の影響により高くなるとも報告されています。


 受動喫煙は自分だけの問題ではないので、すぐに解決出来ないことが多くみられます。特に小児にとってはその環境から離れることは出来ないため、否応なくその害を被ることになります。
 近年、喫煙に関しては社会はかなりその悪影響を考慮するようになり、医療機関や公共施設、交通機関はほぼ禁煙になりつつあります。しかし、喫煙者の近くでは受動喫煙は避けることが出来ません。すぐに症状が出る訳ではありませんが、可能な限りその影響は減らすことが大切です。特に、乳幼児や小児に対しては、周りの人の禁煙が唯一の解決策と思います。






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