クリニック通信
2014/04
B型肝炎ワクチンについて
B型肝炎ウイルスは急性肝炎ばかりでなく、慢性肝炎から肝硬変、肝がんの原因となることで知られています。
通常は血液を介した感染なのですが、近年では血液以外に体液、汗、尿などでも感染が起こるとされ、ワクチンによって乳幼児全体の感染防御を目指すという機運になっています。
ウイルス性肝炎は、A型肝炎、B型肝炎、C 型肝炎などが有名ですが、B型肝炎はC型肝炎と共に慢性肝炎から肝硬変、肝がんの原因になることで知られています。肝硬変の12%、肝がんの17%はB型肝炎ウイルスによるものです。
B型肝炎ウイルスは1965年に発見され、感染は血液や血液製剤を介して起こるとされてきました。特に乳幼児ではキャリア(ウイルス保有者)の母親から出生時に感染する母子垂直感染が問題とされ、これに関しては1985年から「B型肝炎母子感染防止事業」が実施され、多大な予防効果をあげています。
B型肝炎ウイルスは通常感染すると約30%が急性肝炎として発症し、多くはそのまま治癒します。ただ発症者の1〜2%は劇症肝炎となり、その70%が死亡するという危険もあります。今までは3歳までの乳幼児はキャリア化しやすく、3歳以上は一般にB型肝炎に罹患しても治癒してキャリア化しないと考えられてきましたが、近年感染するウイルスの遺伝子型の変化により感染後のキャリア化が増加しています。
また、B型肝炎ウイルスは一度感染すると、治癒したように見えてもウイルスは完全に消えることはなく肝臓に残存し、再活性化する危険性も指摘されています。
B型肝炎ウイルスにはA〜Hまでの8つの遺伝子型があると分かっています。日本における遺伝子型はタイプCが大多数で次にタイプBが多く、欧米型のタイプAは少数でした。タイプCは慢性肝炎や肝がんにおける罹患率は高いのですが、キャリア化はしにくいとされています。ところが最近では急性肝炎のタイプAの感染が増加傾向にあり、タイプCと異なりタイプAの場合は10%程度がキャリア化すると言われています。キャリアが増えるということは、より周りの人への感染の危険が増えることになりますので、出来るだけB型肝炎に感染しないことが重要になります。
日本におけるB型肝炎ウイルスのキャリアは130〜150万人でおよそ人口の1%程度です。ところがアジアやアフリカなどでは人口の約8%以上がキャリアになっている国が沢山あります。そのため世界では年間約60万人がB型肝炎ウイルス関連の病気で死亡していると考えられています。
B型肝炎ウイルスの感染経路には母子垂直感染と水平感染の2つの経路があります。母子垂直感染は出産時に母から子にうつるもので最も重要な経路ですが、母子感染防止処置をすることで9割以上は防ぐことが出来ます。これは現在も事業として実施されていて今後キャリアである母親から乳児への感染が増えることはないと思われます。次に水平感染に関しては、近年では血液ばかりでなく体液や汗、涙、尿、唾液などを介したキャリアからの水平感染が問題になっています。特に問題なのは家庭内感染、その中でも父子感染が多いことです。その他、性交渉、針治療、ピアス、入れ墨、接触系スポーツにも危険はありますし、保育園、養護施設、介護施設などの集団施設での感染も報告されています。水平感染は通常の接触ではうつりませんが、突発的な怪我や長期の接触で知らないうちに罹患してしまうことが多いようです。鼻血、外傷などの出血などに加え、体液の付着する歯ブラシ、耳かき、ヘアブラシ、カミソリなどの共有、おむつ交換時の接触などが感染の原因になると考えられています。
B型肝炎ウイルスの感染予防にはワクチン接種が最も効果があります。3回の接種で90%以上の有効性があり、10年以上予防効果があるとされています。しかし、日本においてはキャリア率が低かったため、ワクチン接種はあくまで母子垂直感染などの危険性がある場合の個別的接種に限られていました。ただ小児のB型肝炎の4割は水平感染によって起こっている以上、母子垂直感染を防止するだけでは、B型肝炎の発症を止めることは出来ません。小児全体にワクチン接種をすることが最も有効な予防法ということになります。B型肝炎ワクチンは日本では任意接種の扱いですが、今後は世界の動向と同じく定期接種化されていくものと思います。不慮の感染の予防という点からは、乳幼児期からワクチン接種をすることが望ましいと思います。
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