発行日:2006/06/02
現在子供は1歳1ヶ月です。近々、麻疹の予防接種を受けたいと思っております。
これまでも予防接種をうけるたびに、ごくまれかとは思いますが取り返しのつかない副作用がおきた事例などを読んで、とても不安になっていたのですが、
4月からMRワクチンが導入されたと聞いて、前例が少ないという事もあり安全性に少し不安を感じております。
もし反応があるとしたらどのような副作用が考えられますでしょうか。
また他の予防接種につきましても、副作用がひどいもの等、気をつけるべき予防接種はありますでしょうか。
お答えします。
1)MRワクチンは、平成18年4月から定期予防接種として実施されています。
MRワクチンは麻疹と風疹の混合ワクチンですから、今までの麻疹と風疹の単抗原ワクチンが起こし得るような副作用を、同様に起こす可能性はあると考えられます。
麻疹ワクチンに関しては、1〜2週後の発熱が最も起こりやすいもので、勿論程度の差はありますが10%位に起こります。
また、その後発疹が出て、実際の麻疹のようになることも稀にみられます。更に脳炎のような重篤な副作用も起こりえますが、その頻度は極めて稀で、他のワクチンとも大差はありません。
実際の麻疹に罹った時に起こる危険性に較べれば、麻疹ワクチンははるかに安全と言えます。
風疹ワクチンは麻疹ワクチンに較べれば副作用は軽いと思いますが、やはり1〜2週後の発熱や発疹、リンパ節腫脹などが稀に起こる可能性があります。
また、その他の特殊な副作用もない訳ではありませんが、やはり極めて稀な話で安全性はかなり高いと思います。
MRワクチンは現実にはまだ始まったばかりですから、実際にどの程度の副作用が出るかは正確には判りません。
しかし、他国での混合ワクチンの使用経験、日本での治験レベルでの検証では重篤な副作用はなく、安全なワクチンと考えてよいと思います。
2)この年令のその他のワクチンの副作用では、三種混合(DPT)の接種部の腫れが比較的よく見られるものです。
これはワクチンの効果を高めるために加えられているアルミニウム塩に対する反応ですが、多くは部分的な腫脹、硬結のみで全身への影響は殆どありません。
腫脹は数日で改善し、硬結でも1〜2ヶ月でよくなります。かなり個人差がありますので、腫れやすい人は気を付けるということでよいと思います。
3)更に任意接種ではありますが、ムンプス(おたふくかぜ)ワクチンには無菌性髄膜炎の副作用が稀に起こることがあります。
ムンプスウイルスは神経に入りやすいウイルスなので、弱毒性の生ワクチンであっても脳や脊髄に感染を起こすことがあるからです。
勿論、頻度的には1万人に1人程度ですが、副作用が起こればきちんとした治療が必要となります。
発熱、頭痛、嘔吐がその症状ですが、実際のおたふくかぜに罹れば数十人に1人は重篤な髄膜炎を起こしますので、ワクチンの方がはるかに安全とは言えます。
その他にも、ムンプスは膵炎、睾丸炎、難聴などの合併症がありますので、任意とはいえ接種しておく方がよいワクチンと言えます。
以上、大まかに個別的なワクチンの説明をしましたが、最後に予防接種の基本的な考えを説明します。
予防接種に関しては、100%安全なワクチンというものはありません。いくら安全とはいっても100万に1人位は重篤な副作用が出る可能性はあります。
しかし、ワクチンをせずにその病気にかかれば、はるかに高い頻度で重篤な症状になり、命に関わることも少なくありません。
ワクチンはその副作用と実際に病気になることの危険性との比較で、はるかに有用であると認められて、初めて接種できることになっています。
ワクチンの副作用は確かに大きな問題ではありますが、その陰でワクチンをしていなかったために、重篤な病気になった小児がはるかに沢山いるということをご理解下さい。