発行日:2006/01/01
■ テオフィリンとはどんな薬ですか
テオフィリンは気管支喘息の治療に長い間使用されてきた薬で、現在でも日本では多くの患者に投与されています。
その理由は、気管支拡張作用は勿論ですが、低濃度でも抗炎症作用もあるということで、喘息の急性期治療薬としてだけでなく長期管理薬(コントローラー)として使用されてきたからです。
特に長時間効果の持続するテオフィリン徐放製剤(テオドール、テオロング、スロービッドetc.)は、安価な上に内服薬でも効果が悪くないということで、日本では多用されてきたのです。
しかし、肝臓で処理されるテオフィリンは、元々その血中濃度が年令や個人によってかなり不安定で、過量になると嘔吐などの胃腸症状や興奮などの神経症状が出やすく、安全性には多少問題のある薬剤でした。
特に乳幼児では血中濃度が上がりやすいために投与には注意が必要で、以前から血中濃度を目安にした少な目の投与量が推奨されていたのです。
■ テオフィリンの問題点とは何ですか
このように気管支喘息の治療薬として一般的に使用されていたテオフィリンですが、近年になってテオフィリン使用患者でのけいれんの重症化の報告が相次いでされるようになり、テオフィリン関連けいれんと言われ問題となってきました。
このけいれんは5才以下の乳幼児に多く認められ、一部は重度の後遺症を残します。テオフィリンがこのような脳障害にどこまで関与しているのか、本当に濃度に関係なく起こしているのかなど、まだ正確な因果関係は証明されていませんが、
発症に際してのテオフィリンの関与が否定出来ないため、喘息治療におけるテオフィリンの使用は制限を受けることになりました。
平成17年11月の日本小児アレルギー学会で発表された2005年小児気管支喘息ガイドラインでは、テオフィリンは中等症以下では基本治療から外れ、他剤で効果が乏しい時の追加治療の一選択薬という扱いになりました。
特に2才未満の乳児喘息では、6ヶ月未満は原則的に禁止、6ヶ月以上でも適応は慎重にすることになり、けいれん性疾患のある児には使用せず、発熱時にも減量あるいは中止を指導するよう明記されています。
■ 喘息治療におけるテオフィリン使用中止の影響はありますか
テオフィリンの使用が制限されることになったため、今後の小児喘息治療は今まで行われていた治療の選択肢が1つ狭まることになりました。
これからは気管支拡張剤としてのβ2刺激剤、気道過敏性を抑える抗アレルギー剤に加え、乳幼児においても吸入ステロイド剤が大きな役割を持つようになり、早期の使用が必要となるでしょう。
ただ、これらの薬の多用による別な副作用の可能性や、簡便なテオフィリンの不使用による長期的な面での喘息コントロールの悪化を危惧する意見もあります。
気管支喘息の治療はきちんとした管理が基本です。治療薬の選択も含め、治療方針を主治医とよく相談することが大切だと思います。