【アデノウイルス感染症の話】
梅雨から夏季に移る時期は、蒸し暑く体調を崩しやすいこともあって、毎年のように夏風邪が流行します。今年は、それに加えプール熱のようなアデノウイルス感染症も目立っています。
アデノウイルス感染は小児の熱性疾患によく見られるもので、咽頭炎、扁桃炎、気管支炎、肺炎などの上気道、下気道感染から結膜炎、胃腸炎、膀胱炎、髄膜炎など多彩な症状を起こします。保育園、幼稚園、学校などでの集団発症がよく認められています。アデノウイルスはウイルス学的には49の血清型とA〜Fの6群に分類されています。この血清型によって起こりやすい症状があり、以下のような病気がよく知られています。
■ 咽頭結膜熱(プール熱)
咽頭結膜熱は毎年のように流行を起こすもので、以前プールを介して大流行したために「プール熱」と呼ばれています。勿論、感染は唾液などの飛沫感染や眼脂などの接触感染なので、どんな場所でも起こります。感染は5〜7日の潜伏期間を経て、高い発熱、悪寒、咽頭炎、扁桃腺に白苔の付く滲出性扁桃炎、眼の赤くなる重度の結膜炎などで発症し、高熱は4〜5日続くこともあります。また一部には、気管支炎や肺炎などの下気道症状を起こすために、症状がより重篤になり回復が長引くこともあります。
■ 流行性角結膜炎
流行性角結膜炎は極めて感染性の強いもので、アデノ8型が多いとされています。この感染は、単に結膜だけでなく、光の通る角膜にも炎症が起こり、角膜混濁の原因になるため、早期の治療が必要です。また、簡単な接触で感染するため、隔離、手洗い、タオルの区別など周りの対応が感染を防ぐためにとても大切です。
■ 感染性胃腸炎
発熱、嘔吐、下痢、腹痛などの胃腸症状もアデノウイルスは起こしやすく、特に乳幼児には多くみられます。冬期などではロタウイルスなどと同様、乳幼児下痢症の原因の一つになっています。また、下痢はなくとも、腸管膜のリンパ節炎のために強い腹痛を訴えることがあり、乳幼児では腸重積症の原因になることもあります。
その他、アデノウイルス感染では全身の発疹がみられたり、無菌性髄膜炎、出血性膀胱炎などの症状が出ることもあります。診断は、扁桃炎、結膜炎、下痢などがあれば、迅速検査ですぐ調べることは可能です。ただ、治療に関しては、残念ながらこのウイルスに対する特効薬はありませんので、あくまでも症状に合わせた対症的な治療になります。多くは3〜4日の経過で治っていきますが、悪化を避けるためには発症した時は無理をせず安静にすることが大切です。
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